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『謎の独立国家ソマリランド』について

いやー、おもろかった。

おもろかった要素は3点。

1つは、断片的で偏った情報しかない
ほとんど未知なるエリアの話だったから。

1つは、ソマリ社会そのものがおもろかったから。

最後の1つは、書き方が巧い!
だって、内戦の結果、無政府状態の南部ソマリアをさして、
「リアル北斗の拳」だよ?
笑っちゃった。


では、順番に説明しましょかね。

皆さんは、ソマリアときいて、何を思い浮かべます?

腐人は、内戦と海賊。

耐え間ない内戦によって、自国を逃げ出し、
ほうほうの体で難民キャンプにたどりついた痩せた子供の映像だとか、
自衛隊まで派遣された海賊退治だとか、
大体の日本人がそーゆー感じではなかろうか。

腐人の知識はそんなもんだったので、
この本みて、一番に思ったのは
「ソマリランド?ソマリアじゃなくて?何それ?」
だった。

それについて、ものすごくおおざっぱに解説してみよう。

そもそもアフリカの国境ってのは、
19世紀に欧米列強がかってに決めたものだったりする。

彼らは勝手にやってきて、
勝手に陣取り合戦をした。

その結果、ソマリ人が住んでたエリアは、
フランス領のジブチ、
イギリス領のソマリランド、
イタリア領のソマリア、
になった。

※その後、長い内戦によって逃げてきたソマリ人難民のキャンプが
ケニアとエチオピアにでき、それぞれ居住区になった。
おおきく言うと、この5つのエリアが、今現在のソマリ人のいるところ。

ただし、現在も戦闘状態が間断なく続くソマリアエリアは、
海賊集団のプントランドと、無政府混乱状態のソマリア南部、
さらにいえば、ガルガイヨなど自称国家があったりする。

ちなみにソマリアの「ア」は
イタリアの「ア」と同じ意味だそうで、
土地を示す言葉だそう。

ってことはなんだ、
「ソマリア」と「ソマリランド」って、
言ってる意味は一緒ってことか?


でまー、そやって欧米列強が勝手にボクの陣地はここー
とかやってだな、
それぞれのお国柄にあわせて、統治をしたんですわ。

イギリスは、君臨すれども統治せず。
イタリアは、どこにいってもイタリアーン至上主義で。

その結果、イギリス領では、昔ながらのソマリ社会の伝統、氏族主義がのこり、
イタリア領では、それが破壊された。


で、その後に、宗主国からの独立運動がおこって、結果、
旧イギリス領のソマリランドと
旧イタリア領のソマリアを足した「ソマリア」ができた。

※『ソマリア』がいっぱいでてきてややこしいので、
イタリア領だったころのソマリアを「旧伊ソマリア」
合併してからのソマリアを「合併ソマリア」
内戦がおこって以降のソマリアを「南部ソマリア」
とします。



ソマリ人の社会は、もともとは氏族の集まりだそう。

よって、「合併ソマリア」の中で、やっぱし権力争いが起こって、
特定氏族による独裁やら虐殺やらの内紛となって、
例によって例の如く、アメリカやら国連やらがしゃしゃりでて、
大きなお世話をした結果、より事態が悪化した。

今ではイスラム原理主義勢力もでてきて、
20年以上戦争がつづいている状態だ。

そーゆー状況の中、
昔ながらの氏族社会制度が残っていた
旧イギリス領ソマリランドエリアが、
自分たちで紛争解決をはかり、
「合併ソマリア」のうち、
旧イギリス領だった地域を「ソマリランド」として
独立国家の名乗りをあげた。

ソマリランドの人々は、戦争をやめ、武装放棄し、
選挙を行い、複数政党政治を行い、平和な社会を築いて暮らしている。
そして、自分たちの国を国際社会に認めてもらいたいと思っている。

でも、「南部ソマリア」など他のエリアでは、
「ソマリランドなんて認めない、ソマリは1つ」
ってなご意見もある。


そーゆーいろんな「ソマリ人のいるところ」を実際にめぐり、
実際に見聞きし、体験したことが書いてあるのが本書で、
はっきしいって、へーふーほほーの連発。

この「ソマリ人がいるところ」の違いをわかりやすくゆーと、

●銃をもった護衛がなくても歩けるのが、ソマリランド。
ただし、ボラれることがある。

●銃をもった護衛が4人要るのが、海賊国家のプントランド。
もし護衛がいなければ5分程度で拉致られる。

●銃をもった護衛が10人ぐらい常にぴったり要るのが
モガディショ(合併ソマリアの首都)。
彼らは停戦中でも、常に自動小銃を下げ、
動くものをみつけると、反射的に引き金を引く。
敵のこともあるが、カラスや一般市民のこともある。

●隣国の難民キャンプは護衛なくても歩けるが、
なかには、イスラム原理主義武装勢力の人がいて、
外国人が拉致されたり、
外国人の訪問をうけた人が不利益をこうむることがある。

なるほどねぇ。

歴史背景なんかも、恐らく
ここまで詳しくソマリの歴史について
かいてある日本語の本って、ないんじゃないかな?

腐人が上記に書いたのは、本当に上っ面だけなんで、
もっとちゃんと知りたい!という方は、
本書をどうぞ。


それにしても、腐人はよく、
「人がなければ、国はないが、
 国なくしても、人はある」
といいますが、
「南部ソマリア」はまさにそれ。

ここは、今現在、中央政府がない状態なんだけど、
人は生きて、日々の生活を送っている。

それこそヤギがそのへんうろうろしてるソマリランドなんかより
日本の生活に近く、よい品質のシャレたデザインの服が販売され、
サービスという概念もあったりする。

それに、ここは、今、
「経済学の実験場」と呼ばれているそうなのだが、
どーゆーことかというと、昔、政府があったころは、
度重なる戦闘で、インフレがすごかったそうだ。
※戦争とインフレの関係を知りたい方は、
経済書もしくは本書をどうぞ。


しかし、今、無政府状態となったため、中央銀行が消失した。
そうなると、新しい札を刷ることができず、
市場に出回る札は、老朽化して減ったりすることはあっても、
増えることがなくなった。

結果、なにが起こったかというと、インフレがおさまり、
通貨が安定したという。

うわー…リバタリアンの主張を裏付けちゃってるじゃんよ…(~_~;)


国家至上主義な方がよく、
「国がなくなれば、インフラや病院などがダメになる」とか言いますが、
じゃぁ、実際どうなのか。

答えは、NO。

ちゃんと氏族という昔ながらのつながりが機能し、
電気、ガス、水道、病院、学校などは
「氏族運営」されているという。

小さな政府をとおりこえ、政府喪失でも、
「完全民営化」して、ちゃんと機能してるのだ。
ほな、国って、いらんのちゃうん(~_~)?


笑っちゃったのが、どんだけ過酷な戦闘状態になっても、
携帯電話会社と送金会社だけは、
誰も攻撃しなかったという。

理由は簡単。

金と携帯がなければ、戦争も略奪もできないから。

そうなのか。
じゃぁ、もしこの先、なんかあったら、
そこに身を寄せることにしよう…。

ただ、この送金会社、
後に実際使ったらって話がでてるんだが、
腐人はすごーくひっかかっている…(ー_ー)!!


この辺ぐらいまで理解してくると、
ソマリ人って、どーゆーひと?
ソマリ社会って、どーゆーもん?
ってなってくるでしょ?

ソマリ人は、はっきりいって、ひじょーに評判が悪いらしい。

隣国・エチオピア人
「傲慢で、荒っぽくて、いい加減で、嘘つき」

隣国・ケニア人
「アグレッシブ」

スーダン人
「勘弁してほしい。(中略)うるさいし、荒っぽい」

高野さんご自身の経験として。
「人の話を最後まできかない。
 センテンス2つが限界。
 自分が知ってることを誇りたいだけで、人なつっこさゼロ。
 なにごとも、金、金、金で、
 ちょっとでも弱いとこをみせると襲ってくる肉食集団」

そして、ほぼカート中毒。
カートなくしては、本音がきけない。

このカートは、一種の覚醒作用がある植物で、
禁止されてる国もあるようだが、
読んだ感じだと、お酒みたいな作用??

これを午後になるとずっとやってる集団なので、
まー上記の評判はわからいでもない。

とはいえ、うちとけて身内となれば、ころっとかわる。
ま、その辺は世界共通か?


人の話をきかない、でわかるように、
むちゃくちゃ短気でせっかちなので、
何事にも「超速」で対応するらしいのだが、
それも、よかったりわるかったり。

例えば、腐人がひっかかった送金会社「ダハブシル」。
世界中に支店が、200だか300だかあるらしいんだが、
高野さんは取材費が底をついて、
滞在中にここを通して、シドニーの方に送金を頼んだ。

頼まれた方は、シドニーにあるダハブシルの支店に行き、
受け取り手の名前を電話番号を告げ、お金をあずける。

すると、受け取り側のソマリランドでは
口座を作る必要もなく、シドニーでの送金手続きが完了次第、
ほぼ瞬間的にお金を受け取れるというのだ!

は?そりゃどゆ仕組みだ??

ちなみに、「南部ソマリア」のモガディショで
同じことをしようとすると、
まず口座をつくれ、それには数日かかるといわれたそう。

腐人の常識だと、モガディショの言はわかる。
でもソマリランドの言は、は?だ。

うーん…その金はどう処理されてんだか、
IBANもBICも関係ないわけ??
確かにネット社会になって、
いわゆるリアル銀行を通さない手法が
ないこともないけどさー。
すげー気になる…。


説明がややこしいんで、後回しにしてきましたが、
そんなソマリ人を理解する上で、最も重要なのが、氏族制度。

腐人が氏族といわれて一番に思い浮かぶのは、
スコットランド。

クランと呼ばれるアレ。
わかりやすくいえば、タータンチェックの柄の違いですな。
   ↑
  それで片付けてはいかんと思う・・・。

高野さんは、戦国武将になぞらえて、
この氏族を区別していたが、
はじめ、それがすごく違和感あったんだが、
この500ページを超える1冊を読み終える頃には、
「ありがとう!わかりやすくしてくれて!!」
ってな気分になる。

なんでかったら、やっぱり日本語の特性なのか、
カタカナ羅列は、すんなり頭にはいらんのですよ。

例えば、

イサック氏族の
ハバル・アワル分家の
サアド・ムセ分分家の
イサック・サアド分分分家の
アボコル・イサック分分分分家の
ジブリール・アボコル分分分分分家の
レール・ウマル分分分分分分家の
バハ・ウマル分分分分分分分家の
マゴル・カダン分分分分分分分分家

って書かれたってわからんわー!って感じでしょ?

それを、ハウィエ源氏だの、ダロッド平氏だの
ってしてくれるもんだから、
すごーくすんなり入ってくるし、
カタカナ部分忘れても、漢字部分を覚えてるから、
この人はあそこと繋がってるのかってのがわかる。

なるほど、上手い!


でも、この本のソマリ社会の成り立ちを読んでて、
この概念を日本人が理解するのに、
一番近しいのは、暴力団じゃなかろうかと腐人は思った。

あ、これ、ゆっときますが、
ソマリの氏族が暴力団だっちゅーとんじゃないですよ?

構成の面で類似があるって意味です。

血縁、姻戚で成り立ってるわけじゃないとことか、
各氏族の長老が集まり、話し合いをするグルティとか、
手打ちの仕方、
氏族内での上下関係など、
ひっじょーに類似点を感じるのは腐人だけだろうか。

特に、いいなーこの制度と思ったのが、
争いの終結方法が決まってるってこと。

「ヘール(掟)に従いディヤ(賠償金)を払ってヘサーブ(精算)する」
ってのが、ちゃんといきわたってるのだ。

ソマリランドが、「南部ソマリア」と違って、
戦争を終えることができたのは、
これが関係していると高野さんは推理し、
現地の方も同意見だったりする。

※詳しく知りたい方は本書をどーぞだが、
ちょこっとだけ言うと、

例えば殺人事件があったとき、
罰を下す、という選択もあるが、
被害者遺族がディヤを望めば、そちらで片をつけることができる。

被害者が男なら、
加害者はラクダ100頭で、女なら50頭と決まっている。

ちなみにこのディヤは、一人で負担するわけではなく、
氏族内のすごく小さい単位で、「ディグ・ディガーグ」とよばれる
血縁結社があり、そこのメンバーで頭割りして払う。

ただ、この責任分散が、プントランドではよくない方向に働き、
なにやっても自分でケツをふかなくていいと無責任化して、
海賊が横行する結果になってるらしい。

そして、内戦や虐殺といったような、
いったい何人が死んだかわからないような
ひどい争いの解決法は、
「殺人の血糊は分娩の羊水で洗い流す」。

意味が知りたい方は、本書をどーぞ。


そーいや、この本の中で、腐人の興味をものすごくひいたものがある。

それは、海賊見積もり。

金、金、金とせまられ、予算が逼迫してきた高野さんが
カートによっぱらった頭でおもいついたことを、
同じくカートによっぱらったソマリ人に相談し、
「もし海賊やったら、いくら稼げる?」
を算出したものなのだが、
はじめは笑っていた腐人も、最終利益をみて黙る。


……………………………………なんておいしい………
………………………………………………ゆ、ゆれる…
…でも、ソマリにはウォッシュレットはないよな…。
      ↑
     あきらめポイントはそこかい!



ま、なにはともあれ、
ひっじょーに楽しい本でした。

(453)一般本 『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』 高野秀行

そうそう。
これ、取材費がすごーくかかったそうなので、
1冊でも多く売れて、
赤字が少しでも減ることをお祈りします(^_^;)。
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[ 2013/05/11 ] 腹黒読書録 | TB(-) | CM(-)
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